ユーティリティーアーチ
 装置の目的
この装置は永久歯がすべて生えそろわない小学校2年生から5年生くらいまでの子供で、前歯4本と永久歯の奥歯のみにブラケットとワイヤーを装着したものです。これは、前歯の位置を整えたり、前歯の咬み合わせの深さを正常にしたり、時には前方へ傾斜した奥歯を正常な位置に起こすための装置です。ヘッドギアーと組み合わせて使用することが多く、上顎前突(上の前歯が出過ぎ)の方や咬み合わせの深い方(過蓋咬合)、新しく生えてきた前歯の歯並びが悪く、あご自体の位置がズレてしまった方などにも使用します。
 装置の仕組みと使用方法
・ユーティリティーアーチは前歯4本に金属製または合成樹脂性のブラケットを体に害のない歯科専用の接着材で装着されています。また、奥歯には金属製のバンドとそのバンドに溶接されたチューブ、そして取り替え自由な歯を移動するための矯正線(ワイヤー)、このワイヤーとブラケットを固定するための結紮線(けっさつせん:リガチャーワイヤー)からできています。この装置は自分で取り外すことのできるものはありません。
・ワイヤーは前歯の側切歯の部分から歯茎の方向に向かって段差をつけて曲げられており、歯茎に接触しないように調整されています。しかし、この側切歯から奥歯までの部分は固定されているわけではありません。このワイヤーでまず前歯を真っ直ぐに並べ、ワイヤーの形を調節して前歯を傾斜させたり、上方へ持ち上げたりする事ができます。
・最も奥の歯はブラケットではなくチューブになっており、このチューブの後ろ側から出ているワイヤーをエンドと言います。この部分は周囲の歯茎や口腔粘膜を刺激しないように歯茎側へしっかりと曲げてあります。
 注意事項
・歯磨きに注意してください。この装置を歯に装着すると歯が磨きずらくなります。最初に矯正装置を装着している人専用の中央部が山形になったハブラシをお渡しします。このハブラシで、ワイヤーの上下に分けて、毛先をワイヤーの下に入れるように一本一本丁寧に磨いてください。

・歯を磨く時に歯磨き剤を使用すると口の中がすぐに泡だらけになって、磨けているかどうか確認しずらくなりますので、最初は使用しないでください。鏡できちんと磨けているかどうか確認しながら磨きましょう。一通り磨けたら、あとは歯磨き剤をつけて普通通りに磨いてかまいません。

・ユーティリティーアーチに最初に装着するワイヤーは、あまり痛くならないように、非常に細くて弾力性のある柔らかいものを使用しています。しかし、ワイヤーを装着した日から子供で2〜3日咬むと歯が痛くなります。これは、歯の移動が開始する時の痛みなので異常なものではありません。数日間は特に食事の時に痛いので、普通の食事ができなくなります。この間はお粥やうどん、トーフやプリンなどあまり咬まなくても良い食物を選んで少しの間ガマンしてください。この歯が動き始める時の痛みは我々に治す事はできません。しかし、ある日、突然痛みが消えて行くのがわかります。

・食事の時に痛みななくなると、色々な物が食べたくなります。しかし、固く大きなセンベイをガリッと咬んだり、大きくて厚い肉をかみ切ったり、豆などのお菓子類を不用意に食べると、ブラケットが歯から外れてしまいます。指でさわるとブラケットがワイヤーの上を左右に動くのでわかります。痛みななくなったら、食べ物に充分注意してください。もし、ブラケットが外れてしまったら、なるべく早く修理に来院してください。放置するとはずれた歯が元も位置に戻ってしまいます。

・装置を装着したばかりの時はデコボコの歯並びに沿って、ワイヤーも曲がりくねって装着されています。この時、エンドのワイヤーは歯茎側にしっかりと曲げられていますが、歯の移動によって歯並びが真っ直ぐになってくると、この曲がりくねったワイヤーも真っ直ぐに伸びてきます。この余ったワイヤーがエンドから後方へ出てくるわけです。従って、最初はしっかり曲げられていたエンドも、徐々に後方へ伸びて、時々エンドが頬粘膜に当たってチイチクしてくる事があります。この場合にはエンドを切って曲げなおしますので来院してください。

・ブラケットを装着したばかりの時には非常に柔らかいワイヤーが入っています。この時、側切歯から奥歯までワイヤーを固定していない部分が咬むことや指でイタズラすることによって揺れてしまいます。これを繰り返していると、金属の疲労によって、ワイヤーが折れてしまう事があります。これは常に同じ部位を繰り返し曲げることによるもので、金属の性質なので防ぎようがありません。ワイヤーの装着後はできるだけ指でワイヤーを揺らしたり、大きく固い食物でワイヤーが揺れないように注意してください。。
 緊急事態

・ワイヤーがエンドから脱出したり、折れてしまった場合
 
最初の柔らかく弾力性のあるワイヤーは、強い力を受けると変形してエンドがチューブから抜けてしまう場合があります。また、ワイヤーが折れてしまう場合もあります。この場合はすぐに来院してください。どうしても来院できない場合や当院が休診の場合は市販のラジオペンチなどでワイヤーをつかんで、元のチューブに入れたり、痛い部分を切ることのできる場合もあります。最悪の場合はワイヤーを切断せざる得ませんが、余計に痛くなることもあり、あまりお勧めしません。
・奥歯のバンドが浮き上がった感じがしたりカタカタ動く、奥歯の歯茎が痛いような気がする時
 
この場合はバンドが歯から外れていたり、バンド自体が割れてしまう事があります。この場合はなるべく早く修理するようにします。
・ブラケットが外れてしまった場合
 
自分で修理するのは不可能なので修理に来院して下さい。放置するとその月には歯の移動が行われず、最終的に治療が長引いてしまいます。
・ブラケットやリガチャーワイヤー、エンドが唇や頬粘膜に当たって痛い場合
 
来院していただければ、ほとんどの場合にはごく短時間で修正する事がきます。しかし、装置を付けたばかりの時には、慣れていないためにこの様な症状が起こる場合が少なくありません。慣れてしまえば痛みはなくなりますが、それまでの間ブラケットを覆うワックスや頬粘膜にできるいわゆる口内炎(白く噴火口状に盛り上がったのもはアフターという)に対しては塗り薬や貼り薬がありますので、がまんしないで来院してください。
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